
台北駐日経済文化代表処台湾文化センターと、華語圏の文化・歴史・社会を多角的に学ぶ日本大学文理学部中国語中国文化学科との連携企画映画『タイペイ、アイラブユー』上映会トークイベントが、5月17日(土)に日本大学文理学部オーバル・ホールにて開催された。
『タイペイ、アイラブユー』は、台北の街を舞台にさまざまな愛の形が映し出されるオムニバス映画で、チャン・チェン(『牯嶺街少年殺人事件』)、カリーナ・ラム、サミー・チェンなど国際派俳優が多数出演し、台湾、香港、マレーシア、ブータン、フランスなどの10名の監督たちの競演が魅力の話題作。上映後、本作のプロデューサーのエイミー・マーさんがオンライン登壇し、映画批評家の相田冬二さんが会場に登壇してトークイベントが開催された。
■コロナ禍を経て、台北という街を舞台に、さまざまな“愛”を描くことが必要だと思った─ 映画プロデューサーが語る、国際色豊かなオムニバス映画にこめた思い
「皆さん、こんにちは。プロデューサーのエイミーです。今日は会場に本作のスタッフが来場しているんです!」と、オンラインで登壇したエイミー・マーさんが会場のカラリスト2名を紹介した。「本作は10名の監督たちが参加していますが、5名が台湾、5名が海外、5名が女性、5名が男性です。俳優陣も様々な国から参加してくれていますが、日本のスタッフも参加してくれました。」と話すと、会場は大きな拍手に包まれた。
「10章がどう響き合っているのかが本作の大きな魅力。時間、ひととのふれあいが大事に描かかれていて、コロナ禍を経て感じることができた感覚」が描かれていると、相田冬二さんが感想を述べた。「まさにコロナ禍を経て、自分が何を作るべきか考えたときに、若手監督たち台北を舞台に心のふれあいを描きたいと思った。文化的な背景が異なる10名の監督たちが、それぞれの視点で台北を舞台にした“愛”を描いてほしい」と、エイミーさんが本作を企画したきっかけを明かした。「映画全体を通して、すべての関係が対等な存在として描かれているのはとても魅力」だと相田さんが話すと、「ひととひととの縁、運命、そして出会いと別れの中で自分自身を振り返って、自分自身がもつひととの縁を大事にしてほしかった」と、エイミーさんが本作にこめた思いを語った。

エイミーさんが「本作を観たあと、みんなどのエピソードが好きか、嫌いかを討論するんですよ」と話すと、相田さんとキュレーターのリム・カーワイが、最も好きなエピソードとしてチェン・チェンが出演した『幸運な人』を挙げた。「チェン・チェンがフェミニンな演技を、いつもおもしろい役が多いロナルド・チェンがシリアスな演技をしていて、そういうギャップも楽しんでほしかったので、気に入ってもらえてうれしいですね」と、エイミーさんがほほ笑んだ。
台湾が大好きで20回以上台湾に旅行したことがある観客から「道で玉蘭花を売っているひと、ファミリーマートなど、台湾でよく見かける風景から広がるエピソードがおもしろかった。旅行者では見えてこない台湾、人間関係を観ることは新鮮だったが、台湾ひとたちからはどういう感想が多かったのか」と質問されると、「台湾でもどのエピソードが好きか、嫌いかという討論はみんなしていました(笑)。そして自分自身を反映した登場人物をみつけて、自分自身に照らし合わせていく観客が多かったですね。日本の観客の皆さんにも、どのエピソードが好きだったか、どの人物が自分の経験に似ていたかなど考えてもらえたらうれしいです」とエイミーさんが答えた。


10章を通して登場する重要なキャラクターが、台湾の国民的人気歌手ウー・バイ扮する新聞配達員だ。「新聞配達員が重要なキャラクターなのにも驚いたが、何よりもウー・バイさんがキャスティングされた理由が知りたい」と会場から質問がでると、「新聞配達員は街のどこに現れても不思議ではない存在。誰をキャスティングするか考えたときに、“台湾を代表する顔をもったひと”は誰なのか。ウー・バイさんにぴったりだと思いオファーしたところ、快く引き受けて頂けたんです。ウー・バイさんだけでなく、みんな短い撮影でしたが楽しんでくれて、撮影現場は本当にたのしかったです」とエイミーさんが撮影秘話を語った。
最後にある特殊な形(映画を観てのお楽しみ)で特別出演しているリン・チーリンについて、「本当は本人に出演してほしかったけど、あの出演の仕方もこの映画らしくて素晴らしかった。そしてウー・バイさんは台湾の大人気の歌手で、映画出演はめずらしくて、新聞配達員役での出演には本当にびっくり!」と、リムがエイミーさんの巧妙なキャスティングを絶賛した。
「台湾映画には、なにが台湾なのかを味合わせてくれる、そういう自由、寛容さがある。」と相田さんが語ると、「いまの台湾映画の監督たちは、ホウ・シャオシェン監督、エドワード・ヤン監督とはちがう制作スタイルはちがうが、そこには通じる魂がある。それはひととの縁、愛情、あたたかく強いもの描かれているんだと思います」と、エイミーさんが台湾映画の魅力を語った。

【台湾映画上映会2025『タイペイ、アイラブユー』上映会&トークイベント詳細】
日 時:2024年5月17日(土)※上映後のトークイベント
開 場: 13時30分 / 開 演: 14時00分(上映時間115分)
場 所:日本大学文理学部オーバル・ホール(東京都世田谷区桜上水3-25-40図書館棟3階)
登壇者:エイミー・マー(プロデューサー)、相田冬二(映画批評家)
※エイミー・マープロデューサーはオンライン登壇
聞き手:リム・カーワイ(『台湾映画上映会2025』キュレーター・映画監督)
司 会:三澤真美恵(台湾映画史研究・日本大学文理学部教授)
通 訳:中山大樹
※『タイペイ、アイラブユー』の上映会・トークイベントは、華語圏の文化・歴史・社会を多角的に学ぶ日本大学文理学部中国語中国文化学科との連携企画になります。
≪上映作品概要≫

『タイペイ、アイラブユー』 ※日本初上映
2023年/115分/台湾 原題:愛情城事/英題:Tales of Taipei
監督:イン・チェンハオ(殷振豪)/リウ・チュエンフイ(劉權慧)/シュー・チェンチエ(許承傑)/チャン・ジーアン(張吉安)/ノリス・ウォン(黃綺琳)/パオ・チョニン・ドルジ(巴沃邱寧多傑)/ラシド・ハミ(哈希德阿米)/レミー・ホアン(黃婕妤)/リー・シンジエ(李心潔)
出演:チャン・チェン (張震)、チェン・シューファン(陳淑芳)、カリーナ・ラム(林嘉欣)、サミー・チェン(鄭秀文) 、シエ・ペイルー(謝沛如)
字幕:最上麻衣子
©️Kurouma Studios
◆金馬奨2023クロージング作品
台北の街を新聞配達員がバイクで駆け巡り、10章の物語が綴られていく。孤独な人々の心と、さまざまな形の愛が映し出されていく。
『君が最後の初恋』『正港署』のイン・チェンハオ、『私のプリンス・エドワード』『作詞家志望』ノリス・ウォン、『お坊さまと鉄砲』パオ・チョニン・ドルジ、『夕霧花園』で阿部寛と共演したリー・シンジエ等、台湾、香港、マレーシア、ブータン、フランスなどの監督たちによるオムニバス映画。時代、年齢、性別、国籍、さらに生と死を超えた、さまざまな愛の形が描かれる感動ストーリー。
2025/05/19 18:03 配信
Copyright(C)hwaiting.me