
「孤狼の血」の柚月裕子による同名小説「盤上の向日葵」を原作に、坂口健太郎と渡辺謙の魂の演技バトルで魅せるヒューマンミステリー『盤上の向日葵』が大ヒット上映中。とある山中で身元不明の白骨死体が発見された。手掛かりは死体とともに発見された高価な将棋の駒。捜査の末、その駒の持ち主は、将棋界に彗星のごとく現れ時代の寵児となった天才棋士、上条桂介だと判明する。さらに捜査の過程で、桂介の過去を知る重要人物として、<賭け将棋>で圧倒的な実力を持ちながら裏社会に生きた男、東明重慶(ルビ:とうみょう しげよし)の存在が浮かび上がるー。
10月30日(金)いよいよ公開となった本作。この日、都内の劇場で初日舞台挨拶が開催された。
――“生き切る”という言葉が胸を貫く、俳優たちの魂の競演
才能と執念、そして人としての業を描き出す映画『盤上の向日葵』。深い余韻が漂う会場に登壇したのは、主人公・上条桂介を演じた坂口健太郎、彼の人生を大きく揺さぶる伝説の真剣師・東明重慶を演じた渡辺謙、そして脚本・監督を務めた熊澤尚人。万雷の拍手で迎えられた三人が作品への熱い想いを語った。
■「作品が“お客様のものになる”瞬間」
初日を迎えた心境を問われた坂口は、穏やかに、しかし噛みしめるように語った。
「封切りの日を迎えると、映画はもう自分たちの手を離れて“お客様のものになる”感覚があります。少し寂しくもありますが、皆さんに受け入れてもらい、作品が息づいていく姿を見守れることが本当に嬉しいです。」
公開後、SNSには「桂介、頑張れ」「涙が止まらなかった」「余韻がすごい」といった声が寄せられている。それについて坂口は、「撮影中は監督や共演者を信じて、一つひとつのシーンに全力で向き合ってきました。そうした想いが観客の方々に届いたと感じられるのは、本当に救われるような気持ちです」と語り、安堵と感謝を滲ませた。
■「映画は観客に届いてから育っていく」
一方、東明を演じた渡辺謙は、観客の前に立ちながら静かに語る。
「映画は、お客様に届いてから育っていくものだと思っています。東明のような人生を歩む人は少ないかもしれませんが、誰の中にも彼に通じる痛みや震えがあるはず。この作品が多くの人に届いていくことを願っています。」
脚本・監督の熊澤尚人は、構想から完成までの8年を振り返り、「長い時間をかけて多くの方の力を借りながら、ようやくここまで来られました。坂口さんと謙さんのおかげで、本当に理想的な撮影ができた。猛暑の中でしたが、僕もお二人に負けない熱量で挑みました」と笑みを見せた。
■“盤上の死闘”が生んだ緊張と一体感
坂口と渡辺の初共演について尋ねると、坂口は「東明とのシーンは常に不穏で緊張感がありました」と振り返る。
「謙さんは現場ではとても軽やかな方。でも“よーい”の声がかかった瞬間、空気が一変する。二人とも一気に役に没入する、その瞬間の緊張感は忘れられません。」
渡辺もまた、「坂口くんの集中力がすごかった。彼が東明のエネルギーを正面から受け止めてくれた」と称賛を惜しまない。
また、柄本明演じる真剣師・兼崎との死闘について、坂口は「その場の空気が張り詰めていて、まるで刀で斬り合っているようでした」と回想。渡辺も「“化け物が来たな”と思うほどの迫力だった」と語り、役者たちの火花散る現場の様子が伝わってきた。
■クライマックスに込められた“生き切る”という覚悟
映画の終盤、桂介と東明が繰り広げる人生最後の勝負――そのラストシーンには、二人の俳優がそれぞれの想いを込めた。
渡辺は「原作ではもっと悲痛な結末でしたが、脚本では少し優しさが加えられていました。ただ、東明としては彼に“背負わせなければならないもの”があると感じていました」と語る。
坂口も「東明から受け取ったものは計り知れない。彼の愛情や生き様が、桂介だけでなく僕自身にも大きな影響を与えました」と振り返った。
■原作者・柚月裕子も涙
この日、スペシャルゲストとして原作者の柚月裕子も登壇。坂口、渡辺、熊澤監督に向日葵の花束を手渡しながら、感極まった表情で語った。
「映画を観て三度泣きました。幼少期の桂介の健気さでまず一度、大人になって追い詰められる姿で二度目、そしてラストで感動の涙が止まりませんでした。」
柚月はまた、本作の根幹を成すメッセージについてこう話す。
「“生きる”と“生き切る”は似て非なる言葉。“生き切る”には覚悟と決意がある。この映画は、その意味を改めて教えてくれました。」
渡辺も「もともと脚本には“生きろ”と書かれていましたが、先生から“生き切ってほしい”という言葉を何度も聞いて、これは大事なテーマだと感じた」と明かした。
さらに柚月は、「監督が描いた映画オリジナルのキャラクター・宮田奈津子(土屋太鳳)に少し嫉妬しました。小説では描けなかった部分を、見事に映像で表現してくださって」と微笑みながら作品を称えた。
■「この映画を、みんなで育ててほしい」
イベントの締めくくりに、渡辺は「この映画がどう成長していくのかは、皆さんにかかっています。ぜひ一緒に育ててください。」とコメント。
坂口も続けて、「夏の暑さの中、命を懸けて撮った作品です。登場人物たちが“生き切った”姿を、ぜひ目に焼き付けてほしい」と言葉を添えた。
大きな拍手に包まれながら幕を閉じた『盤上の向日葵』初日舞台挨拶。
将棋という静謐な世界を通じて描かれる“生きることの意味”が、観る者の心を深く揺さぶる。この冬、日本映画界に新たな魂の名作が誕生した。
【作品情報】
山中で発見された白骨死体。手がかりは、この世に7組しか現存しない将棋の駒。容疑者は、突如将棋界に現れ棋士たちを圧倒し、一躍時の人とな った天才<上条桂介>。捜査の過程で、賭け将棋で裏社 会に生きた男<東明重慶>の存在が浮かび上がり、やがて、謎に包まれた桂介の生い立ち が明らかになる。それは、想像を絶する過酷なものだった...。
衝撃の結末、魂が震える慟哭のヒューマンミステリー。
『盤上の向日葵』
出演:坂口健太郎 渡辺謙 土屋太鳳
監督・脚本:熊澤尚人
原作:柚月裕子「盤上の向日葵」(中央公論新社)
音楽:富貴晴美
主題歌:サザンオールスターズ「暮れゆく街のふたり」(タイシタレーベル / ビクターエンタテインメント)
製作:「盤上の向日葵」製作委員会
公式HP:https://movies.shochiku.co.jp/banjyo-movie/
公式X/Instagram:@banjyo_movie
大ヒット上映中

2025/11/01 08:59 配信
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